■キッチンから育まれる地域との共生
こういったシェフの姿勢に対して、こだわりを持って安全な食材作りに日々邁進する生産者たちもまた、大きな刺激を受けている。キャベツや大根、長菜などの野菜を中心に卸している仙田美智子さんは、18年前に京都から移住し、自然農法で野菜や野草を作り続けてきた。
「化成肥料を使わず、堆肥から作って野菜を育てています。大変な手間がかかりますから、武井さんがやってきて、この農園の野菜を齧って、『ウン!』と頷いてくれたときは、すごく嬉しい。とてもやり甲斐を感じますよ」と快活に笑う。ここでは、ホテルがその活動を通して地元の人々と繋がり、地域社会に貢献するという理念が実践されている。
『sankara hotel&spa 屋久島』のレストランに食材を 提供している、地元の生産者の方々。無農薬・有機栽培などを始めとした安全で美味しい食材作りと、自然の中での暮らしを志して、県外から移住してきた方々も多い。
その事実は、武井氏と地元の農園を回ってゆく内に、さらに明らかになっていく。EM農法により少量多品種の野菜を作り続けている77歳の元気な山崎真理子さん。「キャベツとレタスの違いも分からなかった人」が一念発起、今や島内一のパッションフルーツを作っているという中原洋秋さん。東京から移住して、山中に住みながら鶏の飼育に奮闘する立澤政彦さん。 それぞれに高いモチベーションを持った生産者と武井さんとの間ではいつも 、「次はこんな食材が作れないか」「こういう食べ方があるよ」「お客さんに農園体験のプログラムが提供出来ないか」といった、意欲的な会話が次々と生まれて行く。
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食材に対するこだわりの一環として、武井氏はホテル自らによる食材の生産も試みていきたいと考えている。既にメイン棟地下一階の階段脇には小さな畑を拵え、ヤマミツバやパセリ、パープルセージなどのハーブ類を実験的に栽培し始めた。「いつかお客さんと一緒にハーブ摘みができるようにしたい」と構想を語る武井氏の眼は、ずっと先を見据えている。
『sankara hotel&spa 屋久島』の試みはまだ端緒に着いたばかり。その目指すヴィジョンは、樹齢3000年とも言われる縄文杉が象徴するサステナビリティ(持続可能性)に満ちている。
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