
AXUグリーンセレクションとして開催された、
屋久島エコツーリズム。参加した方は、どんなものを目にし、
どんなことに心が動かされたのでしょうか。
体験レポートで、そのリアルな声をお届けします。
「屋久島は月のうち、三十五日は雨という位でございますからね……」
この有名な台詞はもちろん、作家・林芙美子の代表作であり、日本の近代文学史に残る名作小説『浮雲』のなかの一節だ。年間平均降水量が約4500mmという、全国でもトップクラスの多雨地域であるこの島の気候風土を表現しているとして、現在もしばしば引用されている。芙美子が執筆のために島を訪れたのは昭和25(1950)年のこと。自らその様子を描いた『屋久島紀行』には、当時の日本の「一番南のはづれ」であった未知の島へ向かう船上で、「屋久島とはどんなところだらう……」と期待に胸を膨らませる心境が綴られている。
今やこの島は日本の自然を愛する人々のメッカとも言うべき場所になった。だが、目線を変えれば、その「自然の様相」は全く違ったものとして立ち上がってくる。
そんな芙美子の「秘境への旅」から数えて60年。私たちが野口健さんとともに歩くエコツアーのために訪れた屋久島は、今や一年間に約40万人が訪れる一大観光地として全国に知られるようになっている。その認知を決定づけたのは、1993年に縄文杉を始めとした島の自然がユネスコ世界自然遺産に登録されたこと、またこの島の森をモデルにしたとされる宮崎駿監督のアニメ映画『もののけ姫』の大ヒットなどが挙げられるだろう。世界でも類を見ないとされる、数千年の歴史を湛える杉の大木を一目見ようと全国から観光客がやってくるようになり、今やこの島は日本の自然を愛する人々のメッカとも言うべき場所になった。私たちが訪れた時期はピークシーズンではなかったが、冒頭に挙げたような屋久島の人気に加え、近年の「登山ブーム」がその後押しをしているのか、若者、それも多くの女性たちが登山を楽しんでいる様子が見られた。
彼らや私たちが期待しているのはもちろん、都市の暮らしのなかでは絶対触れることのできない、豊富な自然の姿だ。当然ながら、「エコツアー」に参加しなくても、この森に入れば、誰もがその自然は体感できるだろう。しかし、世界中の山々を歩き尽くしてきた野口さんと、この島の自然の生き字引である太田五男さんとともに山に入ってみれば、その「自然の様相」は全く違ったものとして立ち上がってくる。彼らは私たちと深い森を歩きながら、島の動植物たちに虫眼鏡を当てるかのように、細部をつぶさに観察し、その状態を解説してくれた。そこから見えてきたのは、多くの人々が一口に「豊かな自然」などと片付けてしまいがちな島の自然の、知られざる顔だった。
|