
『牧野日本植物図鑑』は、日本でもっとも有名な植物図鑑の一冊。
その著者、牧野富太郎が、青年時代、日本の植物誌をつくろうと
日々思いを新たにしながら歩いた高知の道をたどり、
氏の最後の夢をかなえた「牧野植物園」でその生涯を知る。
野山を歩く。一歩進むと、足元に見知らぬ小さな花が咲く。また一歩進むと、不思議な形の葉っぱが足首をすうっとなでる。顔を上げていく先に目をやると、大樹がわさわさと風に葉を揺らし、隙間から陽の光が漏れ落ちて、湿った沃土から湯気が立ち上っている。人間が「植物」とひとまとめに呼んでいる物体は、一つひとつ、生きてそれぞれの色形に育ち、一瞬間ごとに違った様子を見せ、言いようのない匂いを放ち、人間の心を動かす風景をつくり出す。花一輪、葉一枚、枝一本を見ても、それらは真に言葉に尽くせぬ構造をしていて、しかも同種でも個体によって差異がある。人間もまた同じ個体差のある生きものだと思うと、人間が人間を知りたいと思うのと同様に、植物を知りたいと欲した、あの人の気持ちがよく分かる。
牧野が標本を採集して歩いた道をたどる「大月町・三原村 牧野富太郎の道を歩くプロジェクト」では、牧野の歩いた4つの道をたどることができる。道の傍らには、牧野にゆかりのある植物ごとにQRコードが設けられ、携帯用植物図鑑サービスを提供、歩きながら、植物の名前や特徴などの情報を得られるようになっている。
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